ホームルームが終わり、先輩の元へと向かう。


私が遅れても黒瀬先輩が待っていてくれることなどもちろんないから、彼が教室を出るよりも早く引き止めに行かなければならない。


「黒瀬先輩!」


相変わらず怖い形相のお姉様方の痛い視線を無視して、バッグに荷物を詰める先輩に手を振る。


私に気付いた先輩は、いつもと同じように笑って答えてくれる。



黒瀬先輩と雅美を足して割ったくらいが、ちょうど良いのかもしれない。


先輩の支度を待つ間、廊下の壁に寄りかかりながらそんな名案が浮かんだ。


あー、でも。
雅美のキツイ口調は先輩には似合わないな。


「ん?なんか面白いことあった?」


いつの間にか先輩は私の前に立っていた。



「ひ、秘密です」


ビックリしたー。



「気になるな」


「私も毎日、先輩のことだけが気になってますよ」


「そうなんだ?」


バッグを肩にかけて歩き出した先輩の後を追う。


男子生徒の数名が懲りずに先輩をサッカーに誘っていた。


懲りずに、なんて言ってみるけど。
サッカー少年の目から見たら、私も同じなんだろうな。