午後の授業も退屈だった。

数学の担当教師が罵声を飛ばして、机に伏している雅美を起こそうと躍起になっている。
さすがに大きな声を出されたら起きると思うけれど、寝たふりを続ける雅美を見て教室が笑い声に包まれる。


なにやってるんだか。


いつまでも子供っぽいな。


でもちょっぴり羨ましい。


あるがままに生きる彼女が
時々羨ましくなり、遠い存在に感じてしまう。




小林雅美。

小学生時代に席が隣りになり、最初は見た目や荒い口調が怖くてほとんど話さなかった。


当時はまだ髪だって染めていなかったし、ピアスの穴だってなかったはずだけど…いつも眉間にシワを寄せて威嚇するような視線を送られていたため、怖かったのかな。


話すきっかけになった定期テストで、雅美は学年最高点を採っていた。スポーツにも秀でていて、性格を除けば本当に完璧な女の子なのだ…性格だけが…。


全ての教科において平均点以下だった私は泣く泣く、雅美にすがったのだ。

雅美は教えることも上手で、私が偏差値の高い高校に入学できたことは彼女のおかげと言っても過言ではない。


聖可高校は県内随一の進学校である。