珈琲も合わせて注文してから、黒瀬先輩は言った。


「俺は、兄より君のことを知らないから。君が表に出さないことを気付いてあげられないかもしれない。兄なら察してあげられることも、見落としてしまうかもしれない」


首を振る。

そんなことないよ。
先輩は私の変化に気付いて、寄り添ってくれた。


「反対に、俺は分かりにくいと思う。昔から喜怒哀楽を表に出すことは苦手で、何を考えているか分からないかもしれないけど…だから、お願い」


お願い?


「菜子の気持ちや想いを全部、俺に教えて。俺も君の前では、正直な自分で在り続けるから」


温かいお願いに何度も頷いた。

私たちの共有した時間が短い分、もしかしたら互いのことを見えなくなり、擦れ違ってしまうこともあるかもしれないけれど。

ぶつかり合って、絡まった糸をひとつずつ解いていけば良いよね。あなたとならそんな生き方が出来ると、確信しているのだ。



「それじゃぁ今の私の気持ちを言いますね」


「うん」


「黒瀬先輩が、好きです。大好き!」


いつもと変わらない。
黒瀬先輩への気持ちが溢れる心は、24時間あなたを求めているだけだ。


「多少の悩みはあります。将来のこととか…でも大半は黒瀬先輩への恋心が占めています」


「俺って、すごい愛されてるんだね」


「今更ですか?」


「俺も君のことしか考えられないよ」


「っ、…」


さらりと甘い言葉を送られることには、まだ慣れない。

胸を鷲掴みにされているような、嬉しい痛みが走った。