夏休み最終日。

マスターの勧めで雅美も一緒に働き、夏休みはあっという間だった。

夏期講習に通う生徒が多い中で、私たちは随分と自由な休みにできた。

けれど仁くんとの約束がない今、大学進学の道を選ぶこともできるんだ。


私…、どうしたら良いのかな。

やりたいこともひとつには絞れない。



「相馬先輩!頑張って!」


黄色い歓声が響く。
今日は相馬先輩が出場する陸上の大会、ではなくて助っ人で入ったバスケチームの試合を見に来た。

昨日、バイト先に現れた相馬先輩から誘われて行くと即答したのだ。


断り切れなかったからと、雅美も誘って。


隣りで黙々と試合に集中している彼女を見て、来て良かったと思う。
試合というか、相馬先輩のことだけを目で追っているようだ。

恋だよね…。



「アイツ、随分と人気あるんだ」


試合終了後、雅美が漏らした。


相馬先輩を応援する女の子は多く、加えて男子からのエールも多かった。彼の社交的な性格に人が集まってくるんだね。


「でも彼女はいないと思うよ」


鈴宮先生のことはまだ諦めきれていないと思うけれど…


「へぇ。女遊び激しそうだけど」


「そんなこと、思ってないくせに」


雅美と目が合う。
素直じゃないよね。