帰国して真っ先にバイト先へ謝りに行くと、
珍しい笑顔で雅美が迎えてくれた。
「いらっしゃいませ」
「雅美?」
バイト先のエプロンを身に付けた雅美は、お客が私だと分かると瞬時に真顔に戻った。
「帰って来たんだ」
「なんで??」
「あんたがいない穴を私が埋めてやってたの!マスターは今、買い出し中だから」
「雅美が代わりに働いてくれてたってこと?」
返事の代わりに飲み物を出してくれた。
私の好きな蜂蜜レモンティーの甘い香りが漂う。
しばらく雅美がお客さんに珈琲を注ぎに行くことを眺めながら、ホッとするその味を堪能した。
なんか私の時より男性客が増えたな…
雅美の営業スマイルに惹きつけられているようだ。
「仁はどうだった?」
「外傷もなくて良かったよ。みんな奇跡だって言ってたの!」
「そっか」
「…婚約を解消したよ」
事前にメールしていたので雅美は驚かなかったが、代わりに溜息が聞こえた。
「やっとあんたたちは向き合うことができたんだよ」
「そうだよね」
お互いにこれで前に進めるんだ。