繰り返すところだった。
仁くんを虐げて、黒瀬先輩を可愛がったご両親のように。
仁くんから逃げ出して、黒瀬先輩の元へ行くところだった。
同じ苦しみを2度も仁くんに与えるところだったと思うと、背中がゾッとした。
仁くん。
これからは絶対にあなたを裏切ることはないと誓うから、どうか元気を出して。
「ずっとあなたの傍にいるから」
まだ婚約は有効かな?
フラフラしていた婚約者に愛想尽かせちゃったかな?
そっと手を握る。
何があってももう、あなたから逃げ出したりはしない。
そう固く決意した夜、声を出さずに泣いた。
仁くんに対する申し訳なさからか、
黒瀬先輩を想う弱い心のせいか、
涙の理由は考えないことにした。



