ううん、想像の話は止めよう。
黒瀬先輩が私のことを嫌いとまではいかなくても眼中にない場合、
私が仁くんの婚約者に戻ることが最善だ。
だって仁くんはこんなにも切実に私を求めてくれている。
立派な社会人であるあなたは、何も持たない無力な女子高生を好きだと言ってくれている。
なにより今まで弟の存在に苦しみもがいていた姿を、1番近くで見てきた。
仁くんの苦しみの根本が、"黒瀬良斗"であるなら、私が黒瀬先輩を選ぶということは、仁くんへの裏切りそのものだ。
裏切れるはずがない。
婚約者以前に、彼は大切な幼馴染だから。
「あ…」
ハッとする。
先輩、もしかして。
あなたの未来予知はーー
『そう遠くない未来、君は、俺を好きになったことを後悔する日がくるよ』
夏休み前の会話を思い出す。
未来予知なんて非現実的だと言ってしまったけれど、彼の言葉が示唆する意味を分かってしまったから。
私は、今、その言葉通り、
仁くんが安らかな寝顔を見せる病室で、
黒瀬先輩を好きになったことを後悔している。
あなたに惹かれた愚かな心を、恨めしく思っているんだ。



