「黒瀬先輩!」


職員室の前で姿勢の良い後ろ姿を見つけ、叫ぶ。


「……」


振り返らなくても私の声だと判断できたのだろう。彼は足を止めてはくれない。



「黒瀬先輩!大好きです!」



無視されたって、相手にされなくたって良い。

伝え続けてやるんだ。


「あなたが好きです!」



彼の隣りに立つ相馬先輩がパンツのポケットに手を入れながら笑い掛けてくれたけれど、黒瀬先輩からの"ありがとう"はなかった。



振り返ってすらもらえなくても、落ち込まない。
最初から叶わない恋だと分かっていたじゃないか。今更、落ち込むことなんてない。



「いい加減にしたら?」


「完全にシカトだったじゃん。うざがられてることが分かんない?」



3年のお姉様方の言葉も、いつも通りに受け流した。