宣言通り、失速しながらも相馬先輩が2周走り、バトンを1年生に繋いだ。
1年生がそれぞれ1周ずつ走った後、私にバトンが回って来る。
こんなに緊張するのって、受験以来だよ。
「春嶋先輩!」
1年生は風のように加速して、あっという間に私の番になった。
3位でバトンを受け取る。
絶対に最後にはなりたくない!
バトンを握り、躊躇うことなく足を踏み出した。
雅美が走れなかった分、精一杯やりきる。
トラックの内側をできる限りの速度で走った。
大丈夫。
ちゃんと走れてる。
バトンを受け取るため手を伸ばしている黒瀬先輩の真剣な表情に、背中を押される。
あと少し、
あと少し走ればーー
もう痛みも忘れていた。
「黒瀬先輩!」
乱れた呼吸で大好きな人の名前を呼び、
バトンを手放したーー
けれど、
バトンは黒瀬先輩の手におさまらず、
地面に転がった。



