リレーの順番が来るまでしつこく説得したが雅美は決して折れず、終いにはベッドから起き上がった。
「私は行くわ!」
「…雅美……」
「おまえいい加減にしろよ!おまえのワガママで周りを困らすなよ!」
「うるせぇな!」
凄い形相で相馬先輩は唾を飛ばして雅美を止めるが、それさえも彼女は振り払った。
こうなった彼女はもう誰にも止められない。
強情すぎるよ…。
立ち上がった雅美を支えながら、仁くんと顔を見合わせる。
「はっきり言わないと分からないかな?」
黒瀬先輩はやっと窓から目を離し、
雅美と向き合った。
「俺らの足を引っ張らないでくれる?迷惑なんだ」
「はあ?」
「もしかして。君が走らないと、俺たちが困るとでも思った?」
「なっ…」
きつめの黒瀬先輩の言葉が続く。
「誰もそこまで君のことを必要としてないよ」
「………うぜぇ、帰ればいいんだろう!」
「雅美!」
腹を立てて保健室から飛び出した彼女を追い掛ける。
「……」
黒瀬先輩の横を通り過ぎたけれど、彼は私と目を合わせてくれなかった。



