トラックを先頭で走る雅美は綺麗なフォームを乱すことなく駆け抜ける。
「本当に雅美はカッコいいよね。仁くんもだけど、2人ともハイスペックすぎない?2人は人間?」
「なにそれ。サイボーグみたいな言い方だ」
口元に手を当てて仁くんが笑う。
ずっと闇を追い払うほどの明るく温かい笑顔に包まれて生きていくものだと思った。
婚約者と言われるずっと前から、幼馴染として一生、傍に居られるものだと思い込んでいた。
「雅美!ラスト1周、頑張れ!」
誰よりも大声で仁くんが叫ぶ。
穏やかそうに見えて実は好奇心が旺盛で、熱い人だ。体育祭などの年間行事が大好きだ。
雅美が華麗にゴールを駆け抜ける姿を、一緒に手を叩いて喜べる人だ。
「雅美!1位だ!」
「やったな!」
ハイタッチで喜び合う。
「雅美…?」
ゴールした途端、崩れ落ちるように雅美は膝をついた。



