躊躇う私に「早く」と急かす先輩は何も感じないのかな。
「こんなことされたら、余計に好きになります」
肩に手を置く。
先輩が前を向いていてくれるから、言いやすかった。
「先輩に触れるだけで、こんなにドキドキして苦しいのに。おんぶなんてされたら、私の心臓おかしくなります」
「不整脈?それなら病院へ直行するよ」
くそぅ、冗談で返してきた!
やっぱり私の好きは全然伝わってない。
痛む足を一歩踏み出して、先輩の背中に体重をかける。
「好きです、黒瀬先輩」
先輩の体温を感じる。幸せの温もり。
「愛してます」
さらさらな髪の隙間から覗いた彼のうなじにーー
そっと唇を押し当てた。
「……」
「……」
よく女性のうなじが好きな男性がいるけれど、先輩のうなじにも色気を感じた。
先輩は動かず、何も言わなかった。
さすがに驚いてるよね。



