もしかして雅美、相馬先輩のことが気になっているのかな。
言ったら怒られるから黙っておくけど。
「分かった。説得しとく」
「……ありがとう」
雅美は安堵した表情でバッグから手を離した。
「私、家の手伝いがあるから。こいつのこと送ってあげて」
はぁ?
いやいや、大丈夫です!
「了解」
「ちょっと、雅美!」
挨拶もなしに走って公園を立ち去る雅美を追い掛けようと踏み出した足が、ズキリと痛んだ。
痛み止めが切れてしまったようだ。
「良かったらどうぞ」
先輩は私に背中を向けて屈んだ。
「え?」
「明日が本番でしょ。少し休んだら」
「…おんぶしてくれるってことですか?」
「そうだよ」
待って。
それは難易度が高い。
少女漫画では定番のシチュエーションかもしれないけどこれは現実で、街中でおんぶしてもらってる女子高生なんて見たことがない。
黒瀬先輩だって恥ずかしいでしょう?



