お腹も満たされて練習を再開しようとすると、
「もう帰れ」
きっぱりと雅美は言った。
「あんた怪我してるんだから帰って休んで、寝ろ」
「もう少し…」
舌打ちとともに睨まれて、仕方なくバッグを持つ。
「黒瀬先輩、ありがとうございます」
缶コーヒーを飲みながら見守ってくれていた先輩にお礼を言う。
「いや?ここで練習しているから持って行って欲しいと希人に頼まれたんだ。体育祭実行委員だからまだ学校かな」
「相馬先輩が?」
「明日お礼言ってやって。喜ぶから」
「あいつ、実行委員なんてやってていいの?成績ヤバいんでしょ」
雅美の言葉に黒瀬先輩は苦笑いした。
「3年になってまで実行委員をやりたがる奴がいなくてね。立候補してたよ」
相馬先輩らしいな。
「友達なら止めれば?あいつの将来がかかってるんだよ」
他者に興味を示さない雅美は珍しく熱くなっていた。



