「馬鹿じゃないの!」
本日2度目の雅美の罵声は、私宛だった。
傷口に響き、痛みが増す。
委員長の代わりに雅美を押し退けて走り出したところまでは良かったけれど、バトンを受け渡す直前、盛大に転倒した。
何もない場所でコケたというわけだ。
滑稽すぎる。
「あんた運動神経、鈍い方だろうが」
「……」
言い返す言葉もない。
控えていた保健の先生に擦ってしまった足に塗り薬と包帯を巻いてもらった。
ズキズキと痛む。
「明日は転ばないようにします」
迷惑をかけたチームメートに謝る。
どうやら黒瀬先輩と相馬先輩とも同じチームのようだった。
本当に恥ずかしいところを見られちゃったな。
ポンッと軽く肩を叩かれ、相馬先輩は笑ってくれた。
「頑張れよ」
「もちろんですよ」
憂鬱な体育祭はもっと憂鬱になってしまったけれど、自分で蒔いた種なのだから気合いで乗り切るのみだよね。
明日は仁くんも見に来てくれるというし、もう失敗はしたくない。



