殺気を漂わせる雅美に私でさえ話し掛けにくいのだから、その場が凍りつくのも無理ない。


何度も言うけど笑わない美人は怖すぎる!


「部外者は黙れよ。委員長に文句言いたきゃ、てめぇが走ってからにしろ」


「さすが雅美ちゃん。カッコいい…」


相馬先輩が余計な口を挟むと、和むどころか更に冷え込んだ。



「委員長の代わりに私が走る!それで文句ないだろう」


男女混合のチームで校庭をひとり1周、100メートル走るルールだ。委員長の分もとなると、雅美は200メートルを走ることになる。さすがの彼女も大きなハンデで背負うことになる。


「早く帰りたいんだよ、さっさと始めろ」


体育祭前日の練習は全員参加で、嫌々来たらしい。

舌打ちをした雅美に、委員長もお礼をいうタイミングを逃したようだ。


すぐに練習が再開されて、私はその様子をぼんやりと見ていた。


本当に200メートルを走り、首位にはなれなかったけれど見事なまでの追い上げを見せた。


けれど雅美が短距離を得意とすることを知っている私は腑に落ちなかった。