そこまで力を入れていない体育祭の練習だったけれど、3日間続けてはさすがに疲れる。凝った肩を回しながら校庭を横断した。


「はあ?長谷部さん、今更何言ってるの?明日は本番なのに」


リレーチームから言い争う声が聞こえ、足を止める。


「ごめんなさい。でも足が痛くて…」


「走りたくないからって仮病を使うなよ」


よく3年の教室で私を睨みつけてくるお姉様方が仁王立ちで立っていた。体操着に着替えていないところを見ると、ただの黒瀬先輩の応援団だろう。
強いて言えば黄色い歓声を上げる役だ。



「長谷部さん?走れないの?」


長谷部さん…ああ、委員長のことだ。


右足には湿布が貼られ、足を引きずっているようにも見える。


「挫いてしまって、保健の先生からは明日の体育祭を見学するように言われてて」


垂れ気味の目をさらに下げて申し訳なさそうに謝る委員長が嘘を吐いていないことは察しているだろうに、非難の声が上がる。


「折れてないんだし、走れるでしょ」


「後1日なんだしさ」


「頑張れない?」


黒瀬先輩と相馬先輩も困ったように後ろで成り行きを見守っていたが、顔を見合わせて前に出ようとしていた。


2人がいるなら、大丈夫だよね。



「長谷部さん、あなたは委員長でしょう?チームの士気が下がるようなことをーー」


「あのさ、」


「うるせえな!!」


咎める声と、相馬先輩の声に上乗せされた罵倒。


いつの間にか雅美が私の隣りに立っていた。