体育祭。

進学校である聖可高校は準備期間、練習期間共に本番の3日前からと規則で決められている。
貴重な日曜日に強制はできず、3年生の参加は任意だ。


学級委員の長谷部さんが黒板に参加種目を書き連ねる姿を眺める。


1年目の体育祭は綱引きと玉入れという小学校でもやるような簡単な種目に参加し、特別スポーツが好きではない私にはちょうど良かった。


「まず、参加できる種目は1人2個までです。当日流れはプリントにもあるように…」


委員長が体育祭の流れを説明している中、カリカリとシャーペンを走らす特有の音が響く。

たかが数十分のホームルームでさえ時間の無駄と判断して、塾の課題を解くクラスメートの必死さはよく理解できていない。


私には受験は訪れないから。



7月に入り、定期テストも無事に終わった。


この体育祭を乗り切れば、夏休みになる。




黒瀬先輩への問いの答えは出せておらず、夏休み明けでいいかなと、逃げている最中だ。


先輩との関係も相変わらずで、何も変わっていない。



「それでは参加したい種目に立候補でお願いします」


委員長の言葉にクラス中が顔を上げた。


簡単な種目に出たいと言う意思がひしひしと伝わってきた。