遊具で遊ぶ子供を見つめる。
無邪気な心を持っていたあの頃とは違い、大人の世界は様々な陰謀が渦巻いている。
私が仁くんと結婚することで、会社での私の父のポジションは確固たるものになる。
亡き仁くんのお父さんの親友として経営の根幹を担うよりも、仁くんの義父という立場である方が父も動きやすいだろう。
「少し時間をください。もっとよく考えてみる」
雅美に話を聞いてもらって、それからゆっくり考えてみよう。
「この話はこれで終わりでいい?」
黒瀬先輩の言葉に頷く。
中央の柱時計は午後6時を指していた。
バイトの時間かな?
「それで今日は、別のことを言うために君を待ち伏せしてたんだ」
「え?」
「誕生日おめでとう」
黒瀬先輩は小さく手を叩いてくれた。