校門をくぐり下駄箱で靴を履き替えていると、ヒールの音を響かせて鈴宮先生が通り過ぎる。


いつもより毛先をカールさせて、ピンクの口紅をつけた鈴宮先生は黒瀬先輩の姿に立ち止まった。


「黒瀬くん、授業の準備を手伝ってもらっても?」


「今ですか?分かりました」


上履きに履き替えた黒瀬先輩は私たちに目配せすると、鈴宮先生の後を追い掛けて行ってしまった。


唖然として背中を見つめる。


「あらら」


「…鈴宮先生、今日メイク濃かったですよね?」


「ピンクのブラウスも可愛かったし、気合い入ってるな。俺なら、迫られたら断れないわ」


「……」


「じゃ、追い掛けてみるか」


「え?」


「生徒と教師でヤバイことしてたら、俺たちが止めないとマズイだろ?」


相馬先輩にバッグを引っ張られるかたちで、英語準備室に向かった。