誕生日に婚約者と過ごす夜。
甘い雰囲気になるどころかお洒落なガラステーブルの上で英文を書き続けた。
眠気も忘れて徹夜で。
「ふあぁ、もう朝だよ…」
「急に眠くなってきたね」
「付き合わせてごめんね。眠ろう」
「いやシャワーを浴びてくるよ。今日は東京本社で打ち合わせなんだ」
「仕事なの?眠らなくて平気?」
目元に薄っすらと影ができている。
「菜子の顔を見てたら、眠ることが勿体ないと思っちゃったよ。まだ1週間、日本にいるから。連絡するね」
「うん!待ってる」
テーブル越しに頭を撫でられる。
大きな手が頰に滑り、身を乗り出した仁くんが額に口づけを落とした。
くすぐったい。
「チェックアウトまで時間があるから、菜子は眠っていくといいよ」
断る前に素早く立ち上がった仁くんに抱きかかえられる形でベッドに下された。
お姫様みたいに、ふんわり抱き締められて。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
恥ずかしくて目を閉じることになった。



