「謝らないで。僕は大丈夫だよ」


「でも……」


「菜子が彼を好きな以上に、僕は菜子を愛しているからね」


迷いのない目で告げられた言葉が胸に響く。


私の告白は、こんな風に真っ直ぐに黒瀬先輩には届いていないことだろう。


あー、駄目だ。
また黒瀬先輩と結びつけて考えてしまう。




「僕の愛は重すぎるかな?」


「仁くん…」


「…さ、行こうか。向こうに植物オイルのお店があるみたいだよ」


「うん、行きたい!」


話題が逸れてホッとしている自分が嫌いだ。

仁くんが無理をしていることに気付いていながら、彼だけを愛していると言えない卑怯な婚約者を許さないで欲しい。