はつ恋の君をさがしてる

そしてその日の夜。

仕事は芽衣子の協力で定時で終わらせたので急いで帰宅し、平原さんが来る前に3人分の夕食を作る。
入院中にお世話になったし、実は入院費用を支払ってくれたのが平原さんだったのだ…。

私が熱を出したのがそもそも高嶺さんがケガをさせたからだと言う理由だったけれど、悪いのは私なのに……。

何度もそう言って自分で支払いをしようとしたけれどダメだと押し切られてしまったので、せめて今夜は私がごちそうしたいと考えたのだ。

とは言うものの、メニューはありきたりな家庭料理。

キャベツと油あげのお味噌汁に肉じゃがときんぴらごぼう。
舞茸としめじと鶏肉の炊き込みご飯。
それから祖母に習った大根の甘酢漬け。

それらを完成させて小さなダイニングテーブルに並べる。

「イスがひとつ足りないなぁ~」

私はひとりごとを言いながら部屋を見渡してみるが、イスの代わりになりそうなものがない。

困った……。

まぁいいか?
私は立って食べれば良いよね?

それか二人が帰ってからゆっくり食べよう。

そう決めて、お茶を入れるためのお湯を沸かすのを忘れていることに気がついて、あわててやかんに水をさして火にかけた。

ちょうどそこに来訪を告げるチャイムが鳴り響いた。