「とにかく、本当に澤田さんが来てくれて嬉しいよ！さっき茜さんが抱きついてたけど、僕だって抱きつきたいくらい歓迎してる。どうか末長くよろしく頼みます。」

改めて加賀山さんからそう言われて、松永さんにも早川さんにもまるで拝むかのように手を合わせられてびっくりして後ずさってしまった……。
よっぽど人が居着かない部署なのかな？
私って、もしかして騙された？

かなり疑心暗鬼になって身構えたものの、その日はわりと普通に書類のファイリング等の無難な仕事を頼まれただけだった。

しかし、翌日からは早速逢坂主任直々の指導のもと次々に新しい仕事を覚えることになった。
本当に毎日があっという間に過ぎていくって位に大変だった。
逢坂主任が産休&育休に入るまでの１ヶ月半の間に主な仕事の流れを覚えて実際に従事しなければならないので、とにかく必死になって教えてもらった。
だけど辛いとか辞めたいとは思わなかった。
逆に楽しくてワクワクした。
普段から社員教育の為の講習会で講師までしている逢坂主任の指導は、とても分かりやすくて的確だった。
それに、秘書課で後輩の面倒をみていた松永さんの気配りや優しさにはほっとしたし、どうしても理解が追い付かなかった時に逢坂主任とは違う視点から指導してくれる早川さんにはとても助けられた。
毎日終業時刻間際にはぐったりしてしまう私をにこやかに励ましてくれる加賀山さんは神さまに見えた。

そして誰よりも私を心配して見守ってくれた高嶺さんにも感謝だ。

忙しくて帰宅が以前より遅くなることもあって、食事の支度や家事を思うようにできなかったりもしたのに、高嶺さんは文句も言わずに助けてくれる。
お互いにくたくたになって帰ってきても、わずかの時間でも一緒に過ごして話を聞いてくれる。

私にとっては怒涛の１ヶ月半だったけれど、高嶺さんがいてくれたからなんとか頑張れた気がする。