静かに怒りのボルテージを上げていく高成さんに私は焦りしか感じられない。
なんとかしなくちゃと思うのに思考も口も１㎜も動かせなかった……。

「どうしたら良いかをお前に相談したくて呼んだんだがな……」

副社長の少し呆れが含まれたひとことに、高成さんが眉をひそめながらも溜め息をつき感情を制御するかのように室内を見回す。

「で？お前はどうするつもりだったんだ？」
「そうだな、わが社としてはまずこの三人に退職勧告して、従わないなら法的に業務妨害で告訴、それからついでに殺人未遂で警察に被害届を出しても良いかと？」
「なるほど。警察に被害届を提出するとなると、被害者である鈴加さんにも協力してもらわないといけないね。しかし殺人未遂とまではちょっと難しい。業務妨害で告訴するほうが現時点では有利だろうね。まぁうちが個人的に彼女らに精神的被害と慰謝料、治療費を請求させてもらうのも有りだけどね」

すらすらとどこの国の話ですか？と思うくらいに物騒な話を交わす副社長と高成さん。
それを聞きながらメモを取る男性秘書さん。
そしてどんどん青ざめていく３人組。

私は？
どうしたら良い？

必死にこの場を平定する策を考えていたら、サーッと体が冷えていく感覚がして、立っていることが辛くなる。
あわてて近くにあるソファーの背に手をかけて床に膝をつく。

その様子をいち早く察知したドア前の秘書さんが足早に駆け寄って大丈夫ですか？と声をかけてくれる。

「鈴加さん！」
高成さんの声もする。
なのに……私はまたブラックアウト。
この後の事を考えるのを放棄した。