はつ恋の君をさがしてる

「「イジメじゃない!教育的指導だ!!」」
二人がハモるように叫んだ!

そしてその場にどっと笑いが満ちる。
もちろん私も一緒に笑ってしまった。

「ひどい……うぅぅ」
「あっ……すいません。つい……」

拗ねたようにソファーに膝を抱えて座り直した穂高さんが妙に幼く可愛く見えてしまう。
だけど彼は私より年上の30才らしい……
同じ親から生まれて似た顔をしている兄弟でも性格とかは全然違うんだなぁ~
兄弟のいない私には新たな発見である。

「鈴加さんごめんなさいね~うちの息子たちってば、揃うといつもこんな感じなのよ~」
真紀子さんは呆れたように苦笑い。
「穂高くんはお笑い担当だから♪笑って正解なの♪気にしないでいいですよ!」
にっこりとすみれさんに言われる。
「お笑い担当の税理士さんですか?」
ついおかしくて聞き返してしまった。
「長男がしっかり者だけど奥さんと息子だけは溺愛しちゃってる気味悪い腹黒弁護士、次男は堅物で女の子が超苦手でクールとか言われてるけど表情筋が動かないだけの融通の利かない外科医、三男はお調子者だけど頭がキレるしお金も稼いでるし格好良くて優しい税理士。ほら!ボクが一番優良物件でしょう?」

いつの間にか復活したらしい穂高さんが気どって自分を指差したら……またまた正義の鉄拳?教育的指導?で高成さんと高嶺さんに叩かれていた……。
「誰が腹黒弁護士だ!」
「融通の利かない男で悪かったな!二度とお前だけは助けてやらん!」

わぁ~怒るのそこなんだぁ~!
兄弟3人のじゃれ合いに笑う家族。
なんだかすごく楽しい!
久しぶりに思いきり笑っておしゃべりして、真紀子さんお手製の夕食をいただく頃にはすっかり緊張は消えてしまっていた。

広くて大きなダイニングテーブルに家族全員が揃って夕食を食べた。
こんな大勢で食べるのは久しぶり。
たぶん法事とか以来かな?

テーブルに並ぶのは普通の家庭料理。
筑前煮に、さばの味噌煮。
きんぴらごぼう、だし巻き玉子やポテトサラダ。
どれも優しい味がしてすごく幸せでおばあちゃんとおじいちゃんと食べた頃を思い出してしまう。

「どうした?大丈夫か?」

涙がこぼれそうでうつむいた私を高嶺さんがいつものように気遣ってくれる。
それもうれしくて……我慢していた涙がぽろりとテーブルの端に落ちた。

「えっ?ちょっと!大丈夫?兄貴が鈴加さん泣かせた!!」

高嶺さんの隣から穂高さんの焦った声がするのだか、一度決壊した涙の堤防はなかなか修復できなくて……
私は申し訳ないと思うものの何も言えずにしばらく泣いていた。