昼食を終えて昼寝をすると言う高嶺さんを家に残して、私は祖父母の家を管理してくれている近所さんを訪ねることにした。
途中のサービスエリアで購入したお菓子の紙袋を抱えて家を出る。

近所と言っても歩いて10分はかかるお隣さんだ。

田んぼや畑に囲まれた懐かしい景色を見ながらのんびりと歩く。
この道は学校に行くときにも通ったなぁなんて思い出しながら……

「こんにちは!お久しぶりです!澤田です。」

玄関先でおもいっきり大きな声で挨拶をする。
すぐにハーイ!と返事がきて奥からバタバタと一人の女性が走ってきてくれた。
彼女は数年前に隣家に嫁いできたお嫁さんで、今は老夫婦と若夫婦がにぎやかに同居しているらしい。

「こんにちは。澤田です。」

改めてご挨拶してお土産のお菓子を差し出すと、本当にうれしそうに笑いなが受け取ってくれる。

「少し前に車が通ったなぁと思っていたんだけど、澤田さんとこのだったのね?久しぶりね~元気だった?」
気さくなお嫁さんはいつも友達のように接してくれるので、私もついつい頬が緩む。

「はい!知り合いにお願いして連れてきてもらいました。」
「へぇ~知り合い?チラッと見たけど、なんか素敵な男性だった気がするけど?」

お嫁さんに茶化されてぽっと頬が赤くなる。
どう誤魔化そうか?と思っていたらタイミング良く奥から老夫婦と息子さんが現れてホッとする。

「おや?久しぶりじゃないか鈴加ちゃん!」
「真田さん!ご無沙汰してます。いつも家の管理をありがとうございます。」
深々と頭を下げて感謝の気持ちを伝える。

真田さんご夫婦が管理を請け負ってくれなかったら今の祖父母の家を維持することは難しかったはずだ。
そのまま家の中に上がらせてもらってお茶をいただくことになった。

私はここでも思いきって借家の話を相談してみた。
すると……。

「じつわなぁ……借りたいのはうちの息子なんだよ!」

真田さんの話はちょっと驚くものだった。