響くんとふたりで、軒を連ねる古民家に沿ってまっすぐ歩く。 徐々に民家の件数が減ってきて、車どおりの少ない道の両端は木々ばかりが視界に入るようになってきた。 「あ……なに?なんか聞いたことのない虫の声がする。ほら、カナカナカナって」 「あぁ、それね。ヒグラシっていう蝉の鳴き声だよ」 「へぇ…。はじめて聞いたわ」 響くんが暮らしているビルばかりの都会では、聞けない鳴き声だもんね。 「木が鬱蒼としたところにしかいないんだよ。なんともいえないような、哀愁のある声が綺麗だよね」