「ちょっと待って」



呼び止められるなんて思ってなかったから、びくり、と肩を揺らしながら振り返る。



「どうしたの?」



響くんと視線が交錯したその瞬間。

チュッ、と柔らかいものが頬に触れた。



「またな」

「……っ」



ひ、響くんったらまた人前で!

頬にキスだなんて恥ずかしいことをっ…!



「ま、またねっ……」



ドクドクと高なる胸を抑えながら、発車音をならす新幹線に乗りこむ。

ドアが閉まる瞬間まで、瞳を潤ませながら響くんに手を振り続けた。