「すずな、しっかりして、目を開けて」

私を呼ぶ先輩の必死な声を聞いた。

初めて名前で呼ばれ、頭がパッと冴えわたる気がした。

いま、すずなって呼ばれた。先輩、私、嬉しくてどうにかなっちゃいそうだよ。

ぼんやりした視界に見えたのは私の下で、横たわる先輩の姿だった。

私は先輩の左腕に抱き抱えられるように包まれていた。

ギシッと後ろで音がしたので振り返ると、私の後ろには脚立が倒れてきていて、それを先輩が右腕一本で支えていた。

これは、一体どういうことだろう、頭がうまく働かない。暑くて、頭が痛くて、フラフラする。

そうか、私は体育倉庫で1人きりで備品整理をしていて脚立から降りられなくて困っていたんだ。

その脚立は少し動いただけで、ぐらぐらしていて安定していなかった。

その上、熱中症まで起こしかけていた。

そこからの記憶が断片的にしかないけれど、今のこの状況から考えると、先輩が助けてくれたってことだけは、わかる。