そのせいで、何度か接触され倒されたりもした。

マークされるのはいつものことだし、想定内のことだったのに。

だからといって、俺はこんなところで負けるわけにはいかない。

かすかな違和感はあったが、なんとかいつも通り、得点だけはとれたつもりだ。

けど、それもこれも岳のおかげだった。

試合ギリギリに戻ってきた俺は、いきなり岳のバカみたいにデカい手に、顔を叩かれた。

「おまえ、なにやってんだ。なめてんじゃねーぞ」

完全にキレていた岳を俺は何も言わずに睨みつけたが、コーチの怒声で俺たち2人は一喝された。

ゆっくり、岳を殴り返している暇もなく慌ただしく試合開始時間になった。

正直言うと、あの時の俺は別のことで頭がいっぱいになっていて、あろうことかバスケをできる精神状態ではなかった。