会場も大歓声の嵐で沸いている。応援席の時田くんが、隣の人と抱き合って喜んでいる。

コートの中で、満身創痍の大谷先輩は、その場に倒れこむように、膝をつき、チームのみんなが彼のもとへ集まっていく。

得点は 87ー85

試合はなんとか逃げ切れたようだったけれど、点差が縮められてかなり厳しいゲームだったみたいだ。

つばさ先輩が、そこにいないせいか私には、勝って全国大会への切符を手に入れたことを手放しで喜べなかった。

でも、よかった、ホッとした。つばさ先輩は、あれから試合にも出られたんだ。

活躍していたみたいだから、安心した。さすが、先輩だ、なんて強い精神力なんだろう。

この時の私は、心のどこかで、つばさ先輩を超人的な特別な人のように思っていた。

今日のこの全ての出来事が彼の心と体にかすかな影を落としているなんてことは、微塵も想像出来なかった。

どうして、わからなかったんだろう。

バスケのコートを離れれば、彼もただの18歳の高校生だったのに。