椅子に座って固まっている私に、彼はゆっくりと抱き付いてきて、私の耳たぶにそっと唇をおしあてる。

先輩の艶やかな瞳は、いつもとは違って私を求めるような視線だったから見つめられるだけで、胸が高鳴って仕方なかった。

綺麗な、つばさ先輩。私はこんなに綺麗な男の人を他に知らない。

こんな風に見られるのが、恥ずかしくたまらなくて目をギュッと閉じて、彼の背中に腕をまわした。

「つばさ先輩」

「蒼井さん。お願い、少しだけ口を開いて」

彼の余裕の無い声がする。

「は、はい」

目を閉じたままで、言われたとおりにすると、激しく熱く唇が重ねられて、体中の火照りがどんどん加速していった。

深く絡みつくようなキスが終わると、しばらく互いを見つめあい、ギュッーと強く抱きしめられて彼の胸にすっぽり包まれた。

もう、幸せすぎて頭が変になりそうです、先輩。

彼の胸のあたたかい体温にうっとりしておとなしくしていた。

「ごめん、俺、結局、邪魔しにきただけだったね」

自嘲気味に言う彼に、ドキドキしすぎて声が出せないほど緊張していた。

その後しばらく、2人でなんにも言わずに抱き合ってお互いの熱を感じていた。