さっきの試合で走り回って誰よりも活躍していた彼が今目の前にいることに、ついつい興奮してしまうというかなんというか。

「だって、試合中の先輩がすごくカッコよかったから」

「え、ホント?惚れ直した?」

先輩は、子供みたいに顔を輝かせる。

「うん。決勝進出おめでとうございます」

私はニッコリ笑って、彼を見上げる。

「ありがと、蒼井さんの声が聞こえたような気がしたよ」

「え、ほんとに?あんなに大歓声の中で聞きとれたんですか?」

凄い、もしかしたらアイのチカラだろうか。

「うん、負けるなって言ってくれただろ?あれグッときたよ」

先輩が、私の手をそっと握って、明るく笑う。

「先輩」

「あーあ、試合中に他のことを考えたのなんて初めてだよ」

「え、なに考えてたんですか?あんなに頑張ってたのに」

「うーん、教えない、秘密」

もうって、先輩を睨むとアハハって笑うので、私もフフって微笑んだ。