県大会準決勝の日、朝から集中していた俺は、桜の声も耳に入ってこなかった。

ベスト4ともなると、観客席の応援の数も半端なく多い。

「つばさ、緊張してない?お腹痛くない?ねえ、なんでそんな無表情なの?大丈夫なの?」

桜にグイグイ肩をゆすられているようだ。

「桜さん、大丈夫っすよ、つばさ先輩はベスト4くらいで緊張なんてしてないっすよ」

後輩の武田が、ブルブル武者震いしながら間違って、俺のタオルで顔の汗を拭う。

「あー、つばさの奴、試合前の精神統一してるから話しかけても無駄だよ。さー円陣組むぞー、つばさ100点得点取れよっ」

バシンッと岳に背中を叩かれ、自分でもパンパンと、両頬を叩いた。

「おーっ、岳。全国いくぞっ。今日も勝つぞ、俺は俺の責任を果たす」

大声で気合いをいれて、円陣を組んだ。