恐る恐る話しかけるけど、彼女はなにも答えてくれない。

彼女がちょっと泣きそうな顔になっているのに、不謹慎にも可愛いって思ってしまう。

よかった、またこうして会いに来てくれたんだ。

肩にまだ岳の手が回されているので、無言で振り払った。

全く油断も隙もないな。

「蒼井さん、つばさの奴、君に構ってもらえなくなったって落ち込んでたんだよ。大会前だし、うちのエースだからまだフラないでやってもらえないかな」

岳が、優しい口調で余計な事をペラペラしゃべる。

あれ、こいつこんなおしゃべりだっけ?って何て恥ずいことを彼女に告げ口してんだ。

「つばさはマジに君が好きみたいだから、いろいろ、いたらない奴だけど長い目で見てやって」