「あ、おい待ってよ。スイカちゃん」

変なあだ名つけないでよ、クズ。

陰で、男子たちが私のことをそう呼んでいるのは、知っていた。

教室を出て行こうとする私を成田くんはしつこく追いかけて来ようとした。

まだ、からかいたりないんだろうか。

最低なやつ。

教室にいた他の男子たちもニヤニヤいやらしい笑いを浮かべているようにみえた。

少し息苦しい、ヤバイ

私は思わず胸元をギュッと隠し、俯きながら早足になる。

「おい蒼井、どうした?」

クラスメイトで同中出身の時田くんが、私の前に立ちはだかり、顔を覗きこもうとする。

時田くんは小柄で、女の子みたいな可愛い童顔の男子生徒だ。

いま、教室に戻ってきたばかりでこの状況が呑み込めていないのだろう。

私に、何度聞いても答えないので、成田くんに向き直る。

「成田、お前また蒼井に何か言ったんじゃないだろうなっ」

時田くんは、眉間にシワをよせて怖い表情になる。

「なんだよ、時田、おまえまたナイト気取りかよ。お前だって下心あるんだろ。蒼井のオッパイが目当なんじゃねーの?
真面目ぶってるけど時田は、ただの巨乳好きのヘンタイじゃね?」