ピンポーン


「はーい!」



ちょうど4時半に家のインターホンが鳴る。


荷物を持って、玄関に揃えて置いておいた下駄に足を差し込み、ゆっくりとドアを開ける。



「お待たせ~」


「ん、待ってないよ」



そう言って道路側に向けていた顔をこちらに向ける。


わ、浴衣かっこいい!



紺のシンプルな浴衣。


真人のクールめな顔にとても良く似合ってる。


やばい...心臓バクバクだ...。



「じゃ、じゃあ行こっか」


「ん、転ぶなよ」


「そっちこそ」



2人で並んで普段とは全然違った服装で歩く。


いつもよりも関係が近くなったような気がしてムズムズする。


心がふわふわして、今にも空が飛べそうなくらいに。



夏なんて、終わらなければいい。


今日が、終わらなければいい。


今この瞬間が、永遠に続けばいい。



そうすれば、これから先に真人が私以外の人と幸せになる姿を見なくて済むから。


ずっと、真人が隣にいてくれるから。



終わんないでよ、この時間。



履きなれない下駄の鼻緒の部分がじんじんと痛くなった。