無事屋上駐車場に到着し、さらに立て掛けっぱなしの脚立を登りエスカレーターホールの上へあがり脚立を上に着いた引き上げる。

完了だ。

脚立は適当に投げ捨て、割れ物のブツはそっと置き、大の字になって寝っ転がる。

久しぶりに見上げた空は何も感想が出ないぐらい普通だった。

しばらく空を見上げた後に立ち上がり周りを見渡す。

最後の場所にと見込んだ通りここは凄く見晴らしがいい。

高所から俯瞰して街を見下ろせば、終わりかけの世界はやっぱり普通だった。

ビニール袋からやっと見つけたブツを取り出す。

かつてCMでよく目にした四角いビンの国産ウイスキーだ。ついでのオマケは袋のチキンラーメン。そのままかじれば酒の受けになると思って持ってきた。

そう、俺は世界の終わりを眺めながら一杯呑みたいと思い立ち、今日頑張ったのだ。

生き残ってしまってからいくらもしないウチに、どう生き延びるかよりもどう死ぬかを考え始めた。

どうせなら粋な死に方がいいと思った。

日本人なら花を見て一杯。月を見て一杯。なら世界の終わりを見て一杯もいいじゃないか。

そう思ったんだ。

ウイスキーのキャップを開けビンをくわえて、舐める程度にウイスキーを飲む。

強い。喉が焼ける。

チキンラーメンの袋を破りそのままかじる。

味の濃いベビースターのようだ。

ウイスキーとチキンラーメンを交互に口にしてみる。

なんだこれ。全然楽しくない。

俺はいったい何をやってんだ?