杏[美桜は蓮兄のどこが好きなの?]

美桜「優しくて、いつだってキラキラしてる、太陽のようで、星のような所かな?」

杏[蓮兄がねぇー、蓮兄ってさ、成績も優秀だし、何でも一人でやっちゃうんだよね、人に頼るって事を知らないで育ってきたから、無理しちゃうんだよね]

美桜「蓮が?」

杏「うちの兄妹、8人居るんだけど、皆生まれつきとか、過去の出来事で声を失った人たちばかりだから、
お互い頼る事ができなかったの、蓮兄が唯一頼るとしたら、次男の暁兄ぐらいだった、長男は、車椅子だし、
その暁兄も、左耳が聞こえないんだけどね]

美桜「そうだったんだ・・」

杏[それとね、蓮兄は大切な人を失ってるの、
倉木真衣、彼女は私達兄妹の幼馴染みで、蓮兄の彼女だったの、二人は凄くお似合いのカップルだった、でも、
中学2年の冬、真衣は脳の病気に侵されていた、
気づいたときにはもう手遅れだった、医者ももう少し早ければって、治る確率は極めて低い、真衣は死と隣り合わせの生活を過ごすことになった、それでも真衣は、
生きることを最後まで諦めなかった、蓮兄と生きる事を諦めなかったの、そんな真衣でも一度だけ、涙を流した時があったの、蓮兄はその事を知らない、真衣に頼まれてたから、真衣は効果が見込めないであろう抗がん剤を投与し続けた、奇跡を信じて、でも、中3の夏、
蓮兄の陸上の試合を観たいと言って、連れていったの、
蓮兄はここら辺で有名な選手だったの、
真衣が観たいと言ったのは、蓮兄最後の陸上の試合、
つまり、全国大会だったの、なかなか医者から許可が出なくてね、前日まで行けない事になってたんだけど、
真衣は諦めなかった、そのかいもあって、試合に行ったの、勿論蓮兄には内緒で、会場に着いたときは既に
予選が終わっていて、蓮兄は無事に予選を通過していた、その事を知った真衣は笑顔だった、お昼になって、
蓮兄と合流したとき、やっと真衣の存在に気付いた、
蓮兄は真衣とこんな約束をしたんだって、
《今日は真衣の為に、優勝する》って、
真衣は嬉しそうだった、そして決勝、
蓮兄は真衣との約束を見事に叶えた、優勝メダルは、
蓮兄の手から真衣の首にかけられた、真衣はとても幸せそうだった、でも、その夜、真衣の容態が急に急変、
昏睡状態が2日も続いて、医者にはもう目を覚ますことはないと言われた、でも、蓮兄は諦めなかった、
ずっと真衣の傍についていた、そして奇跡が起こったの、真衣が目を覚ました、そのときにねこう言ったの、
《蓮、優勝、おめでとう、かっこ良かった、
蓮の彼女で良かった》って、
真衣はそれだけ言うと、皆に見守られて、
静かにこの世を去った、享年15歳、蓮兄に向けて言った言葉が最後の言葉だった、それから1ヶ月、蓮兄は部屋に引きこもっていた、1ヶ月裁っても出てこない蓮兄を心配して、両親は無理やり入ったの、そしたら蓮兄は、喘息の発作を起こして、倒れていた、今まであんなに大きな発作は起こさなかった、真衣の死が原因で、喘息の発作が頻繁に起こるようになったの]

美桜「蓮にそんな事があったなんて・・・」

杏[今日ね、真衣の死んだ日なの、今日で2年になる]

美桜「蓮、辛い過去を持って生きてきたのね」

杏[だから、蓮を宜しくね、美桜]

美桜「うん」

杏「さて、そろそろ夕飯の時間かな?下に行こうか」

美桜「うん」

私と美桜は、蓮に声をかけて、3人で下へ。



~杏side終~