いつしか、降り出した秋


雨の中を最寄り駅まで歩


くのが憂鬱だったのか、


彼女を車で30分程の


繁華街に希望通り送るこ


とになった。


埃っぽい車内を駐車場の


薄明かりがかき消したせ


いで彼女は躊躇すること


なく助手席に収まった。


詮索にならないように気


遣いながらたわいもない


世間話を続ける。



結局、約束の場所に着く


までの間、一度も助手席の


彼女を覗き見しなかった。


正直に言えば、


できなかった。


一度そうしてしまうと何


度も繰り返しそうで、彼


女に疎ましがられるのが


怖かったからだ。