しかし、そこには誰もいない。当たり前だ。
瓦礫がある辺りは危ないので、ここに近づく人間は滅多にいない。

「……気のせいか……?」

「こっちじゃ、こっち」

言われるがまま、もう一度瓦礫の方を見ると、そこには小さな少年が立っていた。

「なんだお前、こんなとこにいたら危ねぇぞ」

少年はつまらさそうにため息をついて、フッと笑みを浮かべた。

「つまらんの、忘れとるんか」

「は? 忘れてるって……何をだよ?」