「起きたんだ、大丈夫?」


返事の代わりに、私の髪をなでた。


「メグ、タクシーで話してたのって、ヤキモチ妬いてくれたんか?」


「そんなわけないじゃん。


その子は昴のこと好きらしいから、うまくいったらいいのにな、って思っただけ」


「速攻で全否定すんなや」


「じゃ、私は帰るね」


「帰さない、って言うたら、どないする?」


「昴はそんなこと言わないじゃん」


「俺も一応、男なんやけど」


気づいたら、私の背中に昴の左腕があった。


「俺がメグを好きなこと、忘れてへん?」


「・・・忘れてた」


「忘れんようにしたる」


昴は私を抱きよせながら、上半身を起こした。


見た目ではわからない、力強い胸板。


中華とお酒と男の香りがするYシャツ。


「今晩だけでいいから、俺のもんになってや」


あっという間に抱き上げられ、ベッドに寝かされた。


レスリングなら形勢逆転、一発アウトだ。


私を見おろしている視線が熱くて、でもとてもいとおしかった。


目を閉じたら、許すことになってしまう。


このまま、気持ちに正直に、昴を受け入れてしまったら、どうなるだろう。


両親に同棲の報告までしたのに、裕和と別れられる?


その時、私のスマホが鳴った。


これはメールじゃなくて、着信の音だ。


「ごめん、離して」


一瞬ゆるんだすきに、ベッドからおりた。