「もうさ、須川さんとの同棲やめちゃって、昴にすれば?」


夏休みも終わり9月になり、まだ残暑が厳しい頃、お昼休みに詩織から説教された。


「詩織が昴推しなのはよくわかってるけど、もう決めたことだから」


「溝だかズレだか知らないけどさ、義務感とか周りの目とかは気にしなくていいんだって。


信じられるのは、自分がどう思ってるかってことだけじゃん」


「そんなこと言ったってさ、もう今週末私が一足先に引っ越すんだよ」


「わかってないな、今ならまだ間に合うってことでしょ?」


「もう、明日のプレゼンで頭いっぱいなんだから、詩織も余計なこと言わないでよ!」


「・・・ごめん。


けどさ、別れるなら早いに越したことないって思うから。


恵には、後悔してほしくないんだよ」


「ありがと詩織、私こそ、キツい言い方しちゃってごめん」


詩織は、私たち3人の幸せを願ってるだけなんだって、わかってはいるけど。


仕事に戻っても、頭の片隅がモヤモヤしていた。


「どしたんメグ、えらい仏頂面やで」


「元々こういう顔なんです」


「俺が知っとるメグは、もっとかわいらしいで」


「明日のプレゼンで、緊張してるだけ」


「ほな、俺が練習台になったるわ」


「え、いいよそんなの」


「ええって、ほら行くで」


「どこ行くの、もうすぐ帰るのに」


「会議室ひとつ、別件でおさえてあるんや」