「うわ、ビックリした!」


「来たかいあったわ」


「おかえり」


「ただいま」


「のんびりできた?」


「そやな。


なあ、腹へったから、なんか食わへん?」


「いいけど、駅ナカはどこも混んでるんじゃない?」


「ええとこあるんや」


昴が連れてきてくれたのは、日本橋寄りにある小さな洋食屋さんだった。


「よく知ってるね、このお店」


「取引先の人が教えてくれたんや」


グラスワインとビーフシチューを堪能した。


添えられたバゲットまで、完璧においしかった。


「おいしかったね」


「メグが好きな味やろな、って思ってたんや」


昴はいつだって、まわりの人のことを考えて行動する。


ズケズケ言うようにみえて、実は繊細で謙虚で、自分よりも他人を優先するタイプだ。


どうしてこんなことを考えたのかといえば、裕和が逆のタイプだから。


ふたりとも仕事で評価されてるけど、プライベートは・・・


「なんやメグ、どしたん?」


「あ、ううん、どうもしないよ」


「また来ようや、な?」


「そうだね」


また来ることは、たぶんない。


同期としてなら、あるかもしれないけど。


同期以上を求めている昴と、もうすぐ裕和と同棲する私の間には、明らかな溝がある。