なんとなく、モヤモヤしたまま夏休みを過ごした。


土曜日に裕和の見送りで東京駅へ行ったら、いつも以上に混雑していた。


「じゃあ、今度会えるのは引っ越しの日だな」


「うん、ちゃんと準備しとくから」


「恵、俺の両親の言ったことは気にすんなよ。


俺のことだけ信じてればいいから、な?」


「わかってるよ」


手を振りながら、改札の向こうへ消えていく裕和を見送った。


夏休みでわかったことは、裕和との微妙な行き違い。


かけまちがえたボタンに気づいても、直すのはめんどくさい。


裕和との間に、そんな溝があることを知ってしまったんだ。


家に帰ろうと改札を離れたら、スマホが鳴った。


『メグ、今どこにおる?』


着信は、昴からだった。


「裕和を見送って、東京駅の新幹線口にいるよ」


『ほな、そこで待っといて』


「え、昴も東京駅にいるの?」


『そうや、俺さっき帰ってきて、メグと会いたくなってん』


そうやって、素直に自分の気持ちを伝える昴が、うらやましかった。


「んなこといって、私が東京駅にいなかったらどうするつもりだったわけ?」


『それはやな・・・メグのおるとこまで行くつもりやったで』


「ほんとかなー」


『ほんまやって』


声が真後ろから聞こえた気がして振り向いたら、目の前に昴が立っていた。