翌日、待ち合わせて物件をいくつか内覧した。


「恵は、なんか希望ないの?」


「うーん、駅近ならどこでも」


「なんだよ、二人で暮らすのに張り合いないな」


「ごめん、なんかイメージわかなくて」


「こういうのって、女性側がいろいろと希望出すんじゃないの、ねえ?」


「確かに、そういったお客さまは多いですね」


裕和は、案内してくれた不動産屋さんに同意を求めた。


「裕和はあるの?」


「あるよ、風呂の広さとか、間取りとか」


「そうなんだ、私はこの物件が今までで一番好きかも」


「俺は、最初の部屋かな」


「えっでも、あそこは広すぎない?」


「だんだん物が増えて、手狭になってくって」


「そういうもんかな」


「会社にも一番近いしな。


もう一度、最初の物件へ戻ってくれる?」


「承知しました」


明らかに私たちより年上の不動産屋さんに、裕和はタメ口だった。


そういえば、外食してても店員さんには上から目線で言ってた気がする。


昴は、そういうことはしなかったな。


・・・なんで、昴のこと考えてんだろ。


深呼吸して、裕和の後ろ姿を追いかけた。


結局、最初に見た部屋に決め、9月末に引っ越すことになった。