「恵から聞いてるよ。


育った環境の違うふたりが生活すれば、必ず食い違いが出るだろう。


結婚してからやり直すのは大変だ。


こちらとしては、裕和くんのご両親が賛成なら構わないよ」


「ありがとうございます」


「裕和くん、私たちが悪いんだけど、恵なんにもできないのよ。


細かいことは大目にみてあげて」


「あのね、お父さんもお母さんも、ちょっとひどくない?」


「恵さんの手料理、おいしいですよ。


それに、恵さんは気配りのできる、すてきな女性です。


ご両親が大切に育てられたんですね」


「まあ、裕和くんはお世辞が上手ね」


何の問題もなく、円満に話は進んでいるのに。


どこか他人事のように感じている私がいた。


昴は今、何してるかな。


昴だったら、私の両親にどんな挨拶するんだろう。


お茶だけのはずが、両親はよっぽど気に入ったのか、裕和を夕飯に誘った。


「長居してしまい、すみませんでした」


「こちらこそ、お疲れなのに引きとめてしまってごめんなさいね」


「東京へ引っ越してきたら、僕の両親を紹介させてください」


「そうだね、楽しみにしてるよ」


「では、失礼します」


ドアが閉まり、静寂が玄関を包んだ。


「裕和くん、いい人ね」


「恵にはもったいないな」


「姉ちゃん、意外と面食いなんだな」


弟にまでズバズバ言われた。