「恵?」


私は昴と話していたから、改札に背を向けてしまっていた。


「あっごめん、裕和おかえり」


「須川さん、ごぶさたしてます」


「浦野は帰省か」


「そうです」


「さっき偶然、昴と会ったの。


ほんとたまたま、ね?」


必然なのを打ち消すのに、不自然なほど必死だった。


「そうやな」


「偶然、ね・・・」


裕和は、疑ってるみたいだった。


「僕はこれで失礼します。


メグ、またな」


「うん、気をつけてね」


昴は、あっという間に改札を通って行った。


「恵、行こうか」


「あっ、ごめん」


裕和に声をかけられるまで、昴の背中を目で追っていた。


そのまま私の実家へ行き、両親と弟と私たちの5人でリビングに座った。


「はじめまして、須川裕和と申します。


恵さんと結婚を前提に、おつきあいしています」


「恵の父です。


何もできない娘で申し訳ないが、よろしく」


まるで、よくあるドラマのワンシーンを見ているようだった。


違うのは、父が反対したり怒ったりしてないところだ。


「実は、10月から恵さんと同じ東京本社へ異動になります。


つきましては、入籍前ではありますが、恵さんと二人で暮らすのをお許しいただけないでしょうか」