そして、短い夏休みが始まった。


東京駅で裕和を待っている間、学生時代の長い夏休みのことを考えた。


いま思えば、ムダな時間の過ごし方してたな、と後悔ばっかりだ。


少し早く来てしまったので、手持ちぶさたでボーッとしていたら、突然視界が遮られた。


目の前にパンフレットがあるからだ、って気づいて振り返ると、


「すげー顔やな」


キャリーバッグを持った昴が笑っていた。


「こんな子どもみたいなことすんの、昴だけだよ」


「おー、それは誉め言葉として受け取ったるわ」


「大阪へ帰るんだね」


「そうや、メグは須川さんと待ち合わせやろ?」


「うん、でも偶然だね」


「んなことあるかいな、必然や」


「え?」


「詩織に探り入れたんや」


「なるほど」


「須川さん、来なければええのにな。


そしたら、俺がメグを大阪へさらっていったるのに」


「なに言ってんだか」


「俺は本気やで」


「あのねー、これから裕和が来て、私の実家へふたりで行くんだよ?」


「・・・今日なんやな」


その時の、昴の悲しそうな顔は、一生忘れないと思う。